建物の設計業にたずさわり、ずっと疑問に思っていたことがあります。
なぜ日本人は住宅のメンテナンスをしないのだろう?
なぜアメリカや、ヨーロッパの方々は住宅メンテナンスをするのか?
調べて、まとめてみました。
日本人が住宅メンテナンスをしない理由
- 住宅の寿命と価値観の違い:日本では、多くの家が比較的短期間で建て替えられる傾向があります。これは、建物自体よりも土地の価値を重視する価値観や、地震などの自然災害によるダメージへの対応として新しい建築基準に合わせて建て替える文化が根付いているためです。木造住宅は大体30年で解体されると言われています。
- 気候的な要因:日本の気候は湿気が多く、木造建築にとっては厳しい環境です。そのため、定期的なメンテナンスが必要となりますが、これには費用がかかるため、建て替えを選ぶ人が多いです。
- 経済的な理由:メンテナンスには費用がかかります。特に古い家の場合、現代の基準に合わせるための改修には高額な費用が必要になることがあり、これを避けるために新築を選ぶ家庭もあります。
- 技術的な進歩:新しい建築技術や材料が開発されることで、より快適で安全な住環境が提供されます。古い家よりも新しい家の方が、エネルギー効率が良いこともあり、これが新築を選ぶ理由となることもあります。
- 法的・税制上のインセンティブ:日本の税制や法律には、新築に対するインセンティブが設けられている場合があり、これが新築を促進する要因となっています。
これらの理由により、日本では家のメンテナンスよりも建て替えを選ぶ傾向があります。ただし、これは一般的な傾向であり、個々の家庭によって状況は異なります。また、最近では耐震性やエコなどの観点から、既存の住宅を改修して長く住む文化も徐々に広がりつつあります。
なぜアメリカや、ヨーロッパの方々は住宅メンテナンスをするのか?
- 建築品質と耐久性: 欧米やヨーロッパの建物は一般的に高い建築品質で建てられています。素材の耐久性が高く、建物が長持ちするため、価値が長期間保たれます。
- メンテナンスと改修の文化: これらの地域では、建物の定期的なメンテナンスと改修が一般的です。このため、物件は時間が経っても良い状態を保ちやすく、価値が下がりにくいです。その逆で、メンテナンスをしない建物はすぐに価値が落ちてしまいます。
- 土地の価値: 欧米やヨーロッパでは、土地自体の価値が非常に高く、これが不動産価格を支える重要な要素となっています。特に都市部や人気のある地域では、土地の価値が不動産価格を大きく左右します。
- 歴史的・文化的価値: 古い建物が文化的または歴史的価値を持つ場合、それが価格を支える要因となることがあります。歴史的建造物は、その独自性や魅力で価値が高まります。
- 市場の安定性: 欧米やヨーロッパの不動産市場は比較的安定しており、不動産価格が急激に下がることが少ないです。経済の安定性や住宅政策も、市場を支える重要な要素です。
- 需要と供給: これらの地域では、中古物件に対する需要が安定しており、新築と中古物件の間で大きな価格差が生じにくい傾向があります。
以上のように、建築品質、メンテナンス文化、土地の価値、歴史的価値、市場の安定性、需要と供給のバランスなどが、欧米やヨーロッパの中古物件価格が下がりにくい理由です。
現在の日本 中古住宅市場について
現在日本政府の動きで、空き家(古い木造住宅)がたくさん売買されるようにするために、色々な提案がなされています。しかし、中古住宅市場にはいくつかの問題があります。
- 情報の問題: 買い手は家の状態や価格の動向について十分な情報を得られないことがあります。
- 価格の問題: 不動産会社が家の価格を決めるとき、その方法が明確ではありません。
これらの問題を解決するために、不動産会社のスキル向上や、家の情報や価格に関する情報の共有、リフォームの提案などが必要です。
しかし、これだけでは十分ではないかもしれません。日本の中古住宅は寿命が短く、価格もすぐに下がる傾向があります。これには、家そのものの問題や、増改築が多いことなど、さまざまな理由があります。
たとえば、日本の家はしばしば改築や増築がされています。これは家族の状況に合わせて行われることが多いです。そのため、それぞれの家には個性があり、市場で価格を決めるのが難しい場合があります。また、戦後の高度成長期には、小さな土地にたくさんの家が建てられました。これらの家は、定期的なメンテナンスが行われないことも多く、状態が悪くなることもあります。
結局、中古住宅の価格が下がる主な理由は、家そのものの質や状態、市場での評価方法に問題があるからです。これを改善するためには、家そのものの質や状態にもっと注目し、改善する必要があるでしょう。
要はこれまで、メンテナンスを怠っていたから日本の中古物件が安い値段で取引されていた要因になっています。
住宅メンテナンスをしない日本人の末路
怖い画像ですが、メンテナンスを怠ると最悪このようなケースになると、イメージしてほしいため作りました。説明文は下記↓
住宅のメンテナンスを怠ると、様々な問題が生じ、その末路は以下のような状況になることが予想されます。
- 住宅の劣化と価値の低下:
- 住宅のメンテナンスをしないと、建物の劣化が進みます。これにより、住宅の価値が大きく低下することがあります。特に、屋根の漏水や外壁の損傷などは重大な問題を引き起こす可能性があります。
- 安全上のリスク:
- 劣化した住宅は安全上のリスクを増加させます。例えば、雨漏りが原因で電気系統に問題が生じたり、構造的な強度が低下して倒壊の危険性が高まることがあります。
- 居住環境の悪化:
- メンテナンスを怠ると、住宅内部の快適性や衛生状態が悪化します。カビの発生や害虫の侵入などが起こりやすくなり、健康に悪影響を与える可能性があります。
- 修繕費用の増加:
- 小さな問題を放置することで、将来的にはより大きな修繕が必要になることがあります。これにより、一度に大きな費用がかかる可能性があります。
- 売却や賃貸の困難:
- 住宅の状態が悪いと、売却や賃貸を希望しても、適切な価格での取引が難しくなります。特に、住宅市場が厳しい状況では、売却や賃貸が非常に困難になることがあります。
誰もこんなボロボロの家、直そうそも思わないし、買おうとも思いませんよね・・・・
したがって、住宅のメンテナンスを定期的に行うことは、住宅の価値を保つだけでなく、安全で快適な居住環境を維持するためにも重要です。
これからの日本の中古住宅市場の予想
これからの日本において中古住宅市場が新築市場よりも活性化する可能性は考えられます。その理由は以下の通りです:
- 人口動態の変化:
- 日本の人口減少に伴い、新築住宅の需要が減少する可能性があります。一方で、空き家の増加や高齢化社会の進行により、中古住宅市場への関心が高まる可能性があります。
- 環境意識の高まり:
- 持続可能な社会への関心が高まる中、中古住宅のリノベーションやリサイクルに対する需要が増えています。これは環境への影響が少ないという観点からも支持されています。
- 政策的な支援:
- 政府は中古住宅市場の活性化を目指し、リフォーム補助金や税制優遇などの政策を実施しています。これにより、中古住宅への投資が促進されることが期待されます。
- 消費者の意識変化:
- 消費者の間で、自分のライフスタイルに合った住宅を選ぶ傾向が強まっており、中古住宅のリノベーションによってオリジナリティのある住空間を作る動きが見られます。
- 経済的な要因:
- 新築住宅に比べて中古住宅は価格が低いことが多く、特に若い世代や初めての住宅購入者にとって魅力的な選択肢となっています。
これらの要因により、将来的には新築物件よりも中古物件の取引が活発になる可能性が高いと考えられます。ただし、市場の動向は経済状況や政策の変化、消費者の嗜好などによっても左右されるため、一概には言い切れません。
まとめ
これから日本は外国にならい、中古住宅の価値が上がり、転売の動きが強くなっていくと予想されますので、転売時に建物の価値を下げないために、随時住宅のメンテナンスをすることが大切になってきます。
また、10年後、20年後に中古住宅の価値が新築とさほど変わらなくなってくる時代が来ることが予想されますので、これから新築を建てる方は、メンテナンスがしやすい家を造る事で将来の資産防衛にも繋がります。
建物を長年持たすためのポイントは、簡単です!車の洗車の扱いと同じく、
①洗ってあげること。
②その際に水漏れや小さな劣化を見つけた時は補修する。
これだけで建物はものすごく長持ちします。
私のほうがお客様に提案している、スケルトン・インフィルの考えは、新築後メンテナンスをしやすくし、子や孫に建物を引き継いだり、もしも転売する時にも価値が残るような家を提案させて頂いています。
これから家を建てる方のヒントになっていけば幸いです。
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